JR九州が20年5月の定例会見で2018年度の各路線の輸送密度を公開して、今回は初めて輸送密度が2000人以下の路線の営業係数を公開しました。社長は地元と議論を進めていこうという考えで廃線を前提とした公開ではないと会見で話しました。今回のデータは87年との比較もできるようになっています。
路線別だと幹線の利用はほとんど増加 鹿児島線、長崎線、笹栗線、佐世保線、筑肥線は利用客が増えています。特に篠栗線は利用客が2倍となりました。鹿児島線の場合、博多~新八代間と川内~鹿児島中央間の特急利用客が新幹線に移行しましたがそれでも路線全体の利用客は増えています。但し、鹿児島線、長崎線、筑肥線は一部区間で利用客が減っています。
山陽線の下関~門司間や日豊線は利用客が減っています。区間別だと日豊線の中津~大分間と国分~鹿児島間は増えています。
地方交通線でも増えている路線はある 地方交通線だと利用客の減少が印象付けられますが大村線と香椎線に関しては利用が増えています。この2線は通勤通学利用のほか観光利用が増えたとも思います。特に大村線のハウステンボス有名です。
特に利用客が減少したのは豊肥線、肥薩線などで区間によっては87年と比べて18年は90%減っているところもあります。また赤字額最大の日豊線の宗太郎越え区間も74%減っています。
現在熊本地震や水害の影響で運休になっている路線は単純比較ができません。このデータからは災害からの復旧も大きな課題だと思いました。豊肥線の利用客大幅減少は一部区間の不通で大分~熊本の直通ができないのも理由の一つだと思います。
営業係数が悪い路線は 最後に今回公表された営業収益、営業費を見た上で話をします。今回は利用客が2000人以下の路線の経営状況が発表されましたがこの中で特急が走っている日豊線や久大線、宮崎空港線は営業係数(100円稼ぐのにかかる費用)が比較的良い印象です。宗太郎越えが九州管内最大の赤字なのは、区間の長さもあります。そして宗太郎越えは険しい中で毎時1本の特急を走らせるので費用が掛かっていますが特急料金の収入があります。これは他の特急が走る路線も同じで費用もかかるが売り上げも多く営業係数は比較的よい路線となっています。
深刻なのは日南線油津志布志間や指宿枕崎線で100円稼ぐのに1000円以上かかります。また唐津線・筑肥線の西唐津から伊万里間も100円稼ぐのに700円以上かかります。
相次ぐJRの路線別の利用客数と経営状況の公表 これまでJRは各社とも路線別の利用客数や収支は公表しない傾向でした。しかし昨今では各社でもローカル線の利用客減少の深刻な状況を沿線に理解してもらいたいからなのか公表するようになりました。赤字路線の経営状況や利用客を発表する際にJR各社の社長は「今後の交通機関の在り方を沿線との議論をしたい」と話しています。
今のところ各社の公表データは以下となります。
JR北海道・四国 全路線の輸送密度と営業係数
JR九州 全路線の輸送密度と輸送密度2000人以下の路線の営業系数
JR東日本・西日本 全路線の利用客数と収入
JR東海 路線別のデータはほぼ非公表
ここからも経営が苦しい会社ほどデータを公表し、沿線との議論を促していることが分かります。逆にJR東海はほとんど明らかにしてないところ、東海の管轄路線の沿線とJR東海の交通体系の見直しの議論はまだないのかもしれません。先日も日田彦山線についてのニュースがでました。最善の方法を沿線とJRが議論を重ねて見つけ出してほしいという考えは変わりません。そしてこれは日田彦山線だけではなく各路線で求められていることだと思います。
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