先日国が貨物列車を青函トンネルから撤退させ船舶輸送に戻すことについて完全に鉄道貨物を廃止にできないと結論付けました。青函トンネルから貨物を撤退させることで16分早く通過できるようになります。現在は貨物が走る時間帯を分けたり、貨物が少なく旅客が多いお盆と年末、GWなどだけ高速化させたりすることなどが検討されています。貨物専用トンネルも検討されていますが費用が掛かりすぎるようです。
貨物と共用だと高速化できない 北海道新幹線では青函トンネル前後で貨物と路線を共有しています。そのためトンネル内で新幹線と貨物列車がすれ違うと風圧でコンテナが破損する可能性があります。そのため現在青函トンネル前後は最高時速160キロに抑えています。
元々考えられていた貨物新幹線計画 青函トンネルに新幹線と貨物が共用することは青函トンネル開通時から決まっていたことなので、貨物列車の輸送の在り方についても考えられていました。一つ目は、新幹線と同じ大きさの車体で中を空洞にした専用車両を作り、トンネル前後で、在来線から来た貨車を専用車両に無理やり入れるトレインオントレイン、二つ目は専用のカバーをかけることです。他にも付け替えは必要だが青函トンネル専用貨車の製造も検討されたり、FGTを検討されたりしましたが、いずれも実現に向けての開発はうまく行かず、結局青函トンネル専用の電気機関車を作って(電圧を新幹線用に変えたため)、貨物列車はそのままになりました。
JR貨物は大損失 JR貨物は近年黒字転換しましたが、そのなかでも本州北海道間の輸送は箱です。仮に青函トンネルの貨物輸送を船舶に変えると年1000億以上の売り上げ減となりそうです。これはJR貨物にとっては大きな痛手となります。また船舶や航空は天気に依存されがちです。そのため災害などで物流が止まりやすくなります。
旅客JRは貨物が走っても利益はゼロ JR同士は基本的に協力関係があります。しかしながら貨物に関しては旅客会社と貨物会社の考えの違いが出ています。元々国鉄は旅客も貨物も運営していましたが、民営化後は貨物は専門の会社が設立され、全国区になりました。JR貨物は旅客会社から線路を借りて貨物列車を走らせることになりました。しかしながら民営化当時鉄道貨物は落ち目で経営難が予想されていたので、線路利用料は貨物列車走行のためにかかる維持費のみとなりました。旅客会社としては貨物列車走行による利益はありません。むしろそのためにダイヤを調整したり、遅延の原因になったりするので損失にもなりかねません。
一方で島三社に配分された経営安定基金は支給されていません。現在貨物は黒字化して、かつ四国と北海道、九州の鉄道事業のほうが苦しくなっているので、線路使用料見直しの声も上がっています。
特に北海道と東海は損失 この制度で苦労しているのがJR北海道です。北海道は雪の影響でどうしても線路の維持費が高くなります。そして実際は貨物からの線路利用料よりも高く貨物列車運行のための費用が掛かっているようです。そのため値上げを求めています。
もう一社、意外と苦労しているのがJR東海の名古屋近郊です。名古屋近郊では数多くの貨物鉄道が存在して、各地で貨物輸送が行われています。ところがJR貨物専用路線はなく、東海道線、中央線、関西線、あおなみ線(名古屋貨物ターミナルが存在)からくる貨物はすべて名古屋駅を通ります。他の仙台、新潟、東京、大阪、福岡などは貨物用に別のルートが用意されています。東海道線は豊橋岐阜間で名鉄線と競合しています。しかしながら貨物列車が多いため本数が増やせず、また貨物列車が遅延の原因になってしまいます。これは関西線でも同じことが言えます。本数が増やせず、遅れも生じるので貨物が走らなければ私鉄からJRへ流れたであろう利用客が、流れなかったという意味では損失です。
確かに島三社や雪の多い東北地方では貨物の線路使用料を増やしざる得ないと思います。ただそうなると貨物の経営を圧迫しかねません。なかなか良いバランスを取る方法は見つけづらいようです。
今後の展開は 今回の件は技術開発が進むことを期待しています。そのためには貨物も相応の負担は必要となりますがこれを機に高速化すれば鉄道貨物のシェアも広げられます。なかなか難しい問題ですが、両社にとって最善の選択を期待しています。
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